帰り道
次に覚えているシーンは、病棟帰りのエレベーターの中だった。
その時、先生に、
「人工呼吸器がついているから、がんばって息をしなくていいんだよ」
と言われた。
そこで、思い切って、先生に言われたとおりに息を止めてみたら、息ができた。
「そうそう、それでいい」
と言われた。
隣には親もいた。
…
…
…
次に目覚めたのは、ICU のベッドだった。
ドレインという、余分な体液を排出する管や、点滴の管がたくさんつながれた状態ながらも、無事に ICU に帰ってくることができたのだ。
そこで、初めて母に話しかけられた。
「無事に終わって良かったね。今日はそろそろ帰るね」
そうして、父と母は帰っていき、僕の手術の日は終わった。
と言っても、その時が何時だったのかは分からないが…。