先天性心疾患を持って生きる

先天性心疾患で生まれたベルーガの個人的人生記録

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

前室で見た記憶

この時、僕の体はベッドに固定されていたので、上を向いた目線だけの印象の話ではあるが、黄色い部屋だった。 前室とでもいうのだろうか。 壁も黄色、机やいすも黄色、置いてある道具も黄色…。 しかし、これは、部屋の電灯が黄色かったからなのかもしれない…

手術室へ

やがて、手術室へ向かうベッドが入ってきた。 後年の他の治療の時との記憶の混乱はあるが、裸でベッドに寝かされたと思う。 そうして、ベッドに乗った僕はガラガラと運ばれていった。 エレベーターを降り、やがて、手術室と思われる部屋の前にたどり着いた。…

別の世界

当日の僕の心理を振り返っても、とても「今日手術だからがんばってくるね」などと話す気にはなれなかった。 気になれないというより、大げさに言えば、っ前日、部屋が移動になった時から、僕からは、僕自身と、親と、医療関係者以外の世界がすっかり抜け落ち…

当日の朝

トイレと病室を行ったり来たりしている間、食堂の方に目をやると、友達たちが普段通り朝食を終えた頃で、めいめい、のんびりと1日を始めているようだった。 病院の方針か、子どもたちの気遣いか知らないが、友達に声をかけられることもなく、さりとて、自分…

手術当日

翌朝、いよいよ手術当日だ。 当日は、朝食を食べられない。 水を1杯飲んだくらいだった。 そして、その後に待ち受けていたのは浣腸である。 お腹の中にあるものを全て出してしまうためだ。 僕より前に手術を受けていた子どもたちから、噂は聞いていた。 子…

手術前日

さて、あまりじらしても仕方ないので、時間を進めて 9 月 3 日の話をしよう。 いよいよ、翌日が手術の日となった。 手術の前の晩は、個室に移動になり、親が泊まりに来てくれることになっていた。 僕の場合も、母が簡易ベッドで一緒の部屋に寝てくれた。 嬉…

延期に次ぐ延期

しかし、緊急手術で延期された手術の新たな予定日であった 8 月 27 日。 僕は数日前から熱を出し、風邪をひいてしまっていた。 そのため、手術は再度延期になり、9 月 4 日と、改めて予定が組まれた。 なぜ風邪をひいたのか。 8 月 14 日の手術が延期になっ…

手術が決まった

さて、話はそれたが、そのような状況を改善すべく、手術を受けることになった。 僕の様な心臓病は、ゴールは「フォンタン」という手術だ。 しかし、それに進むためには、「グレン」という予備手術を受ける必要がある。 小学3年生の当時受けたのは、その手術…

家庭生活

家庭生活も大変だった。 当時は、団地の4階に住んでいたが、妹たち(僕には2人の健康な妹がいる)と、遊びに出ても、団地の1棟を1周走らない(実際には歩いている)うちに、バテて歩けなくなっていた記憶がある。 そもそも、自宅がエレベーターのない4…

学校生活

小学2年生の時、教室が2階になったのだが、2階に上がる階段は、3段程度のぼると、息が上がって座り込んでしまうほどだった。 しかも、特別に、教室に近い職員階段を使わせて貰っていたのだが、その階段、通常、生徒は使ってはいけなかった。 なので、他…

チアノーゼの症状

最近、コロナウイルスで有名になったパルスオキシメーター。 これは、血中酸素濃度を測る機械だが、これが測っているのは、心臓から全身に送られる動脈血の酸素濃度だ。 その濃度は通常 98% 以上である。 コロナのニュースでは、93% 以下で入院と言われてい…

僕の心臓

さてここで、僕の心臓について少し書いておこう。 18歳になった時に取得した身体障害者手帳によると「肺動脈狭窄を伴う右室型単心室」である。 しかし、病名で言えば、「(右室型)単心室」「両大血管右室起始」「肺動脈狭窄」である。 名称がややこしいので…

思い出のあの子

けれど、退院後も長いこと文通を続けていたので、一番仲が良かったと思うし、印象も強い。 退院後の外来でも1~2回会ったが、手紙のやり取りとは異なり、対面するとお互い恥ずかしくなって、あまり言葉を交わさなかった。 年上の僕が積極的に話さねば、と…

仲良い女友達

最後に紹介するのは、最も仲良くしていた女の子だ。 彼女は、たぶん、それほど重くない心臓病で、チアノーゼもなく元気だった。 入院中、どんな遊びをしていたかはあまり覚えていない。 最初に書いた、ご飯にお醤油をかけて食べるとおいしいという裏ワザを教…

お兄さんはどうしているだろう

僕は、その男の子とは親しくなかったし(見たこともほとんどなかった)、お兄さんとも面識はなかったので、そのやり取りに対しては、何の感情もわかなかった。 ただ、既に大学生くらいの、大人に近い体つきのお兄さんは、あと何年生きられるだろうか、僕もあ…

3B か 4C か、それが問題だ

さて、僕が入院していたのは、4C 病棟だったと思う。 ある晩(そう、あれは、夕食も終わった晩時のことだったと思う)、僕は大学生くらいのお兄さんと、僕より小さな男の子が言い合いをしているのを目撃した。 男の子「4C!」 お兄さん「3B」 「4C!」 「3B…

遠い昔の手術痕

背中に手術痕があることは、自分では見えないため、全く知らなかった。 「うそ!!??」 と、非常に驚いたが、どうやら嘘ではないようだった。 後で、母親に聞いてみると、生後11ヵ月の時に手術を受けたらしいことが分かった。 驚いた。 今回の入院が、初め…

男友達

入院中とはいえ、うちが裕福とは思っていなかった僕は、親にゾイドをねだったりはしなかった。 いや、安いのでいいから1個欲しいとねだった。 そして、1番安かったが、ゾイドのプラモデルを1個買ってもらった。 とても嬉しくて、付属の商品一覧表をいつま…

ゾイドの子

もう一人の友達を紹介しよう。 彼は、同じ学年の男子で、1番良く遊んだ覚えがある。 彼には色々と教わった。 まず、1番に思い出すのは、ゾイドというおもちゃだ。 帝国軍と共和国軍の戦争とかいう、遠い星での出来事を主題にしたプラモデルのおもちゃであ…

子育てママ

そのため、その後も母から、「○○ちゃん、今、どうこうしてるって」といって、状況を耳にしていた。 それから十数年後が経った頃。 その子と1度だけ会うチャンスがあった。 彼女が住む長野県へ旅行をした時のことだった。 近くまで行くということで、親同士…

年下の子

別の子の話もしよう。 その子は、僕より何歳か年下で、入院当時、まだ幼稚園生だったように記憶している。 最初に話した昔のアルバムに挟まっていた2枚の写真の1枚に写っていた子だ。 年が離れていたせいか、入院中によく遊んだ記憶はあまりない。 そして…

退院の日

そして僕が退院する日のこと。 僕は、病棟を出てエレベーターに向かった。 そこに、彼のご両親がいた。 彼のご両親とも顔見知りになっていた僕は、ご両親が座っていたソファーの隣に、ドサッと音がするように座った。 そして、 「退院になりました」 と言っ…

ICU

それからしばらくして、ついに僕の手術の順番がやってきた。 僕の手術の様子はまた別に書きたい。 とにかく僕は手術を受けた。 手術は8時間くらいかかったようだが、無事に終わった。 そして ICU に帰ってきた。 僕は ICU に数日いたが、その時、向かいのベ…

出てこない友達

手術が終わると、患者たちは ICU に入る。 そこから数日程度で出てくるのが普通だ。 ところが、何日経っても彼は出てこなかった。 心配な気持ちもあったが、彼がいない間に新しい友達ができたりもして、あまり考えなくなった。

男友達

当時、重い心臓病の手術成績は今と比べると悪かったと思う。 そのため、手術に失敗して亡くなる人も多かったようだ。 僕の友だちでも、戻ってこなかった人がいた。 その男の子は、僕の後に入院してきたが、まじめで大人しく、僕とは気が合うタイプの子だった…